キッチンは、感覚教育の宝庫
野菜を洗う、ちぎる、さやから豆を出す、煮干しの頭をとる・・・
こどもがお手伝いできることは、料理の下ごしらえの中に、意外とあるものです。
また、季節の野菜、魚、などの旬の食材を見て、触るだけでも、
その香り、テクスチャー(ぬるぬる、毛ばだった感じ)、重さなど、幼いこどもにとっての刺激がたくさん。
この年頃に、五感で体験した感覚は、鮮烈な記憶となり、その「びっくり」が、一生ものの記憶となります。
こどもは、自然とふれあいながら、育てるのが良い。
自然というのは、外遊びだけではありません。
野菜、果物、魚介も、また、大いなる自然なのです。
お料理の一部をこどもたちが担うことは、
指先を器用にする効果だけでなく、
その時間のなかで、興味をもち、手ざわりを感じ、色や形を知り・・・と能動的で知的な刺激が満ちています。
そして、自らの手をかけたものだからこそ、
よりいっそう、美味しく、大事に、食べられるのです。
「こどもといっしょに料理をつくる」ということは、
そのための準備や、後片付けなど、大人の効率的な考えからすると、
時間も、手間もかかる、とても非効率的なことのように思われます。
ですが、その時のこどもの脳内では、とても豊かで、大人の想像を超えるような、多岐にわたる経験値が蓄積されています。
その経験は、自然を敬い、自分を育てる食に対する姿勢を作ります。
たとえば、工作の時間。
「必要な材料や道具を、自分で用意してくださ~い!」
と準備を ”こども任せ”にするような、声かけをします。
すると、さっさと自分の必要なものを、そろえられる子がいる中、
いつまでもボーッとしてしまう子がいます。
なにをしたらよいのかわからないまま、周りの動きに促されて、キョロキョロ見まわして立ち上がって、お友達の真似をするだけの子もいます。
材料を取りに行ったはいいけれど、
それをどう使って、何を作るか、次のことを考えられない子もいます。
このようなこどもたちを見ると、工作活動以前に必要な力、
生活の中で育まれるはずの、
「話を聞く」
「その話から、自分のすべきことがわかる」
「すべきことの用意ができる」
という当たり前のことが、いかに大切かと感じさせられます。
工作活動は、総合的な力が必要な活動です。
テーマ、材料にそって、自分のアイディアをどのような作品にしていくのか?
その工程を考え、必要なものを見極め、途中で修正しながら、
完成まで、ひとりで、作業を進めなければなりません。
そこには、順序よく進める力、
進めていくうちに起きる失敗を乗り越え、自分の持てる技術とアイディアを盛り込みながら、投げ出さずに、続ける力などが必要です。
ママたちの中には、上手な絵を描くこと、うまく工作ができることようになることがゴールだとお思いの方もいらっしゃるかもしれません。
練習すればそれらは解決する、と考える方もいて、
お教室に通って指導を受け、たくさんの課題をこなすことに重きをおく方もいらっしゃるでしょう。
しかし、それだけでは、力のある造形、絵画は生まれませんし、こどもたちが意欲的に取り組む姿勢もむずかしいと思います。
イキイキとした工作活動のためには、日々の生活のなかで、準備をする力、段取り力を身につけておくことが必要なのです。
自分が体験したことのある「きれい!」「すごい!!」の気持ちが、作品に勢いや、創意工夫をプラスすることにつながります。
「お手伝いはしなくてよいから、お絵かきをいっぱいしてね」
「材料はそろえてあげるから、工作で何か作ってみて」では、順番が違うのと思うのです。
工作に限らず、日常を少しでも自分の手で支える体験をこどもにもたせ、自分自身が見たり感じたりする心の経験を蓄える。こういう、一見、地道なことが、とても大切なものです。
こどもが 、”自分の生活を自分の手で作っている” “自分が体験した“ と、心から感じること、実感を持つことが、成長の基本だと思うのです。
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