こどもの「今」をとらえて
待望のわが子との対面。
10か月の妊娠期間を経て、つわりの予期せぬ吐き気や食欲不振からくる倦怠感、小さな命を守らなければという緊張感と不安のフィニッシュを喜ぶ間もなく、育児はスタート。
育児書や情報のなかで得られる知識は、ガイドラインのようなもの。今、目の前のこの子にぴったりのことなのかを見極めるのは、主に母親の判断にかかっています。けれど、その母親だって、初めてのこと。果たして、この泣き声が、体調不良なのか、ただの空腹の訴えなのか、おむつが不快なのを知らせてくれているのか、眠いのか。
手探りで小さな命を守り育てることは、疲労の蓄積も未経験の質や量になります。寝る時間も自分の思いのままにならない24時間体制だから、なおさらです。
「よりよい母でありたい」という理想と、「そうなれているのだろうか?」の不安の間で、いつも揺れている方も多いことでしょう。
このような母親だけが育児をするような社会になったの、ここ100年くらいのこと。それまでは大家族で暮らし、たくさんの手があり、母親が目を離す時には、乳母や祖母、使用人や母親の姉妹、その子の姉妹などが、子守りをしていたものでした。
母親ひとりで、その子の命の責任を100%負う現代は、当事者にとってみれば、なかなか厳しい社会だと言わねばなりません。社会の役にたつ仕事をもっていれば、さらに、時間的にも体力的にも厳しいはず。かといって、最愛のこどもの成長、教育にとって、よい環境も与えてあげたい。一緒に居られる時間が限られているのだから、離れている時間は、充実した楽しい時間を過ごしてほしい。かつて、わたしも仕事と育児と家事の追われて、毎日なんとか、すべきタスクをぎりぎりまわすような日々でした。深夜、ようやく翌日の朝の食事や登園準備を整え、ベッドに倒れこんだところを娘に起こされて遊んだり、というような。
そんな厳しさのなかで、頑張っているお母様たちに、少しでもお役にたちたいと心から思っています。わたしが、周りの多くの方の手をお借りできて、ここまで来られましたように。
たくさんのご家族様とお話しをさせていただく機会がございました。
お父様に「お嬢さんは、どんな風に育ってほしいですか?」とうかがうと、花嫁姿をご想像されているのか、涙ぐまれ、日頃社会的にご活躍のお父様とは違った、想いがいっぱいの表情にこちらも胸が熱くなりました。
お母さまに「お子様が生まれから、これまで、いかがですか?」とうかがうと、「主人とともに、息子の笑顔でごはんを食べる姿を眺めながら食事をする時間は、何ものにも代えがたく、幸せな気持ちでおります」と、涙ぐみながら笑顔でお答えいただき、隣でニコニコとお母様を見上げる息子さんの頭を、お父様が撫でている姿に、すてきなご家族だなぁと心が温かくなりました。
「育児のなかで、困ったこと、悩まれたことは、ございますか?」とうかがうと、「先人の知恵を拝借しながら、周りの方にお世話になりながら感謝の気持ちで乗り越えてまいりました。試練の先には、必ず、明るい希望が待っていますから、これからも、ひとつひとつ乗り越えていきたいと思っております」と明るく強くお答えいただいたのも、とても印象に残っております。
お母様の「こどもが暮らしのなかで心躍らせる瞬間をキャッチして、両親で喜んでまいりました」という言葉にとても共感し、その言葉を裏付けるように、表情豊かで好奇心旺盛そうな、輝く瞳の2歳さんに心魅かれました。些細な日常のなかには、キラキラと輝くような善意や、発見や、成長が詰まっています。それらを大切にしてこられた様子がとてもよくうかがえました。
大切なおこさまだからこそ、目の前のこどもが、「何をどこまで理解できているのか?」「どうやったら、身につけることができるか?」を常に考えながら進めております。こどもに相対するときは、こどもが主役。その主役が輝くように、学びの時間が「ああ、おもしろい!」「これ、たのしい」「わかった」となりますように。素直なこどもの「!」という瞬間を共有できることが何よりうれしいことです。
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