落ちたコップ


「食事中に、3歳の息子の手がコップにあたって、落としてしまいました。故意にではなくて、まちがって落としてしまったんです。息子はわたしに、『拾って』と言うのですが、こういう場合に、わたしが拾った方がよいのですか? それとも、自分で拾わせる方がよいのですか?」

 こういうご質問をいただきました。みなさんなら、どうお考えになるでしょう。次の3択ならば、どう対応されますか?

① 落とした息子さんが、拾うように声をかける。

② 拾う前に、落としてしまった不注意について声をかけ、拾うように促す。

③ ご父兄が拾う。

 そのお食事中、こどもがどんな様子であったのかにも寄りますので、お答えについての明確な正解不正解は言い切れません。例えば、何度もコップを落とすことが続いているなかでのことなのか、たまたま今回は食事に夢中になるあまり、コップに気がつかない状態だったのかによっても、声のかけ方は異なりますね。

 

今回のご質問の状況をおうかがいすると、コップを落とすことが続いているなかでのことではなく、後者のような、今回が初めてのコップの位置が手の後ろにあったことで、当たってしまったとのことでした。その場合の声かけとして、わたしであれば③を選びたいと思います。

その理由は、こういうことです。コップが手に当たってしまうような位置にあるのを見逃してしまった責任は、大人の側にあるから。3歳のこどもに、そのコップの位置を配慮させるのは、まだ、むずかしいと思うのです。これが5歳のこどもであれば、「その場所にコップがあると、落としてしまうかもしれないから、場所を移動させましょう」と事前に声をかけます。

また、「落としてしまった人が拾う」という常識のようなものは、一見とても正しいようにも思いますが、この場合には、「落とさせられてしまった人が拾わされる」という感覚をこどもが持ってしまいかねません。

「落ちてしまったコップが、割れたりしないでよかったわね」というポジティブな受け止め方をしながら、「ごめんなさないね、こんな場所にコップを置いておいたら、危なかったわね」と声をかけることで、こどもは素直に、あやまって落としてしまったことへの反省の気持ちを持つことができるのです。

 このようなやりとりのなかで、こどもは、おともだちの過ちにも寛容に対応できる気持ちの余裕を持つこと、落としてしまったおともだちに対して「けががなくてよかったね」と思えること、そして、自分から拾ってあげられる行為が出るきっかけを学んでいくのだと思います。

 大人もそうですが、こどもは正しいことばかりをして、成長することは不可能です。まちがったり、うっかりしてしまうことの中から、反省し、次はまちがえないようにやろうという気持ちを育んで、いろんなことが上手になっていきます。

 こどもの失敗を指摘するのは、大人からすれば簡単なことですし、ある意味、きちんとしつけているような錯覚に陥ります。大人は指摘した達成感を感じるかもしれませんが、こどもには、「え? ぼくのせい?」という気持ちを残しながら謝るという、違和感が残ってしまいます。ひとつの失敗に対して、何が悪かったのか、どうしたら次はうまくいくのかを、親子で気持ちを共有しながら、次の機会に「うまくいった!」という達成感が共有できるためのステップにできると、いいなと思います。

Private Infant Education

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